書評「トヨタはどうやってレクサスを創ったのか」("日本発世界へ"を実現したトヨタの組織能力)
「組織行動学」を専門とされる、法政大学ビジネススクール教授の高木晴夫氏による本。
北米で成功していたレクサスブランドを、どのように日本に導入していったかを、詳細に追った本。
本書のメインテーマは、高級車市場で「強いブランドを」構築するために、トヨタという会社がどのような組織としての力を発揮したのかがメインテーマ。会社内側の状況を知るために、当時のコアメンバーから、相当に詳しいインタビューを行いながら本書を書かれています。
「組織」や「トヨタ」について興味のある方は、かなり面白く読めるかと思います。
一方で、あまり興味がないという方は、「組織」についての話は、若干冗長に感じるかと思います..笑
私もどちらかというとそのタイプで、高級ブランドの確立をどう行なったかの方が気になりますが、本書はその点についもカバーされておりますのでご心配なく。
新ブランドの設立、しかも大衆ブランドがオーガニックに高級ブランドを確立する、というなかなか稀有な事例を、トヨタがどう行なったのか。
メインテーマは以下の2点。
特に2については、トヨタという超強力な組織が手掛けているため、レクサスは豊富なリソース(新規参入者に比べたら圧倒的に)を持つことができます。一方で、それが故に新ブランドが「トヨタ化」してしまうというリスクを孕んでおり、ここに対しては相当苦心しながら対処している様子が窺えます。
BMWの前社長が記者懇談会で行った答弁について紹介されています。
- 「レクサスは競合相手ですよね?」という記者の質問に、「そうは思わない。レクサスはトヨタが造っている車だ。開発センターに行ってごらんなさい。同じ技術者が、午前中はカローラの設計をして、午後になるとおもむろにレクサスの設計を始めるんだ。そんなところに我々は絶対に負けない」と答えたというのだ。」
- 「僕もこの発言は正しいと思いました。レクサスを設計、製造する人間は、朝から晩までレクサスのことだけに必死になるべきなのです。そうでなければ、彼らに対抗できる車はできない(木村氏)」
いかにトヨタと距離を取り、独立性を保っていられるか。
企業(特に大企業)が新事業を手がける際に陥るジレンマと、それをどう乗り越えていくのか、一つの参考事例になるかと思います。
https://www.amazon.co.jp/トヨタはどうやってレクサスを創ったのか―“日本発世界へ”を実現したトヨタの組織能力-高木-晴夫/dp/4478000794